その隙間にひそむのは

◆どこからこの虫が?
窓は封鎖しているし、出入口扉は人の出入りがあるとはいえ、扉下の隙間も防虫テープ(IPM防虫テープ)を貼ったし、捕獲目的のトラップも仕掛けている。定期的な清掃もしている。
虫対策は万全!!
「部屋の奥の昆虫トラップは環境調査のために設置したけど、虫はきっと捕まってはいないはず~」と思っていたのに…
それなのに、それなのに……
チャタテ多数!チョウバエ!?シミも?!
いったいどこからこの虫たちは入ってきたというの?
扉が開いているときに、たまたま入ってきただけ…
……だといいな…(やや不安)

そう。たまたまのときもあります。しかし、数匹いる昆虫類がすべて捕まるかどうかはありえない。そして、繰り返し捕まる虫は、室内のどこか「隙間」から入り込んできたり、また、「隙間」で繁殖をしている可能性があります。
どこかに、彼らにとって快適な隙間があるのです。

◆虫の棲み処を無くす
虫たちは隙間が大好き。スススっと…身を潜めます。
とある現場にて。前回の作業で、床の隙間をシーリング剤で埋めた箇所に、シミが姿を現しました。
どうやら、そのすぐ横のこれからシーリングする箇所の清掃作業に伴い、扉付近の隙間に潜んでいたものが出てきたようです。

みつかった!とばかりに逃げ惑うシミくん。床の目地の隙間に入ろうとして、入れずにいるような動きを繰り返しています。

隙間埋め処理を済ませていたことを忘れていた私は、「早く捕まえてください!」と慌てていました。その一方で、長谷川は、「大丈夫。逃げ込む場所ないから」と、涼しい顔で落ち着いていました。確かに隠れる場所がなく、容易に捕獲できました。
シミは動きが素早くて、隙間があったら、あっという間に逃げられてしまいます。
(ちなみに、その後、シーリング剤で扉付近の隙間埋め処理をしました!)
このように、虫が逃げ込んだり、棲みついたりしそうな、ちょっとした隙間を無くしていくことが、虫の減数処理に繋がります。
私たち人間にとって、普段生活するには気にならない程度ですが、よく見ると、建物にはちょっとした隙間があるものです。館内すべては難しくとも、虫に居着いて欲しくない場所は、隙間を無くしていきましょう。
◆湿気が入りこむのも隙間から
清掃作業時に、死虫のチョウバエを何体かみかけることがあります。室内に、シンクがあったり、空調機のドレンがあったり、下水や湧水槽に繋がる排水管が近くにあることが多い印象です。ドレン管と排水管に隙間が生じていたり、隙間を埋めてあったのに、劣化して隙間ができていたりして、チョウバエや湿気があがってくるのです。
エアコンもつけているし、除湿器も稼働しているのに、カビが発生したり、カビを餌とするチャタテムシが多数いたり、湿気がちな箇所に発生する昆虫類がいるときは、排水設備そのものに問題がある場合や、排水管付近に隙間があることが見受けられます。
排水設備の見直しとともに、根気よく隙間を探して埋めていくことで、昆虫類と湿気の侵入を防いでいきましょう。

◆おすすめは文化財IPM清掃との組み合わせ
私どもがシーリング剤などによる隙間埋め処理をしているのは、主に文化財IPM清掃をおこなっているときです。
文化財IPM清掃では、隙間の塵埃をなるべく吸い上げて除塵していきます。きれいになったタイミングで隙間埋めをしています。
物も移動しながら、細かく隙間を確認して、シーリングします。



ちなみに、私たちが清掃に入る折に、お客様のほうでトラップを仕掛けておられると、捕獲状況をみて、どの箇所をどのように重点的に清掃するかを判断することにも繋がります。そのため、昆虫トラップの設置は、文化財IPM清掃の効率化につながり、重要な情報となります。
◆シーリング剤は適切なものを
収蔵庫や展示室、修理室等は、文化財である資料に対する、化学物質の影響も懸念されます。
私どもでは、なるべく揮発する物質の少ないシーリング剤などを用いております。
乾いてから、やや凹みを発生する剤ではありますが、資料への影響を鑑みて、やや盛り気味に処置をする等で、対処しております。

根気強くひとつひとつ
原因となるものを探っていきましょう
by とみぃ