表面湿度画像調査とは何か?!

調査

◆ お肌の潤いは欲しいけれど…

文化財の劣化要因はさまざまあれど、「梅雨」という季節がある水の豊かな我が国において、資料保存で頭を悩ませるのは、湿度コントロールの難しい、「カビ」対策!!

空調をつけたり、除湿器をつけたりするだけでは解決しない、奥の深~い分野です。収蔵庫内の温湿度環境は良好なはずなのに、どうしてカビが!!原因は何?!

そんな時は、もしかすると、各室の温度差や空気の流れ、建物構造や設備にヒントが隠れているかもしれません。

◆ ヒントの鍵は表面湿度⇒結露対策

温度と湿度が高い、梅雨~夏~初秋にかけては、空調設備で温度を一定に保ちます。除湿機能を備えた空調設備もありますし、そうではない場合も除湿器を稼働し、データロガーも設置して、収蔵庫環境管理はこれで安心!
ほっとして外に出ると、モワッとした湿気と暑さにウッとなる…。日本の夏ですね…。
そう、この「外気は高温高湿」であることが、結露、そしてカビ発生に繋がるヒント。空調が効いている部屋とそうではない部屋との温度差により、扉の隙間…のみならず、扉や柱の表面湿度が高くなり、カビが発生しやすい環境となっている可能性があります。
それだけではありません。室内を冷やそうと空調口から冷た~い空気が吹き出し、その冷気があたった箇所の温度が下がることで、表面湿度が上がり、カビが発生することがあります。
その他にも、見えないところで雨漏りをしていて、壁の表面湿度が高くなっている場合や、壁の内側の配管や柱など、建物構造に影響を受けている場合も考えられます。

◆ 対策はケースバイケース

空調口からの冷気が直接当たらないように、かつ、空気循環を妨げないように、棚や資料を配置することは、私たちがすぐ出来る対策です。

でも…建物構造は?図面を見ることは出来ても、よくわかりません。それに…すべての扉付近が、表面湿度が高くなっているのでしょうか?

「一概には言えない…」、それが正直なところです。湿度コントロールは難易度が高く、カビ発生の原因の特定も簡単ではありません。それぞれの現場において、さまざまな要因を鑑みつつ、探っていくことが不可欠です。意外な箇所の表面湿度の値が高く、気圧の関係による空気の流れで、カビ菌が室内に流入している可能性が考えられるケースもありました。

◆ 表面湿度を計測

当社が使用しているサーモグラフィーカメラは、【表面湿度】を計測し、瞬時に画像化することが出来ます。

通常のサーモグラフィーカメラでは、「表面温度」を色分けされた画像から、カビの発生しやすい場所を予測していたのですが、これまで予測に過ぎなかったことが、表面湿度を色分けした画像として可視化されるようになりました。


温度表示画像でも湿り気曲線図から表面湿度は読み取れますが、大変ですよね。その点、この表面湿度画像が表示できるカメラは、ここは62%とか、ここは78%とか、具体的に見えるのです。

表面湿度画像調査は、単体で行う調査というよりは、他の調査(空中浮遊カビ類調査など)と合わせて、複合的に原因を探っていくときに、力を発揮すると言えるでしょう。仮に、表面湿度に問題がないとわかれば、他に原因を絞っていけることも考えられます。

◆ 探求心がモノをいう!

最初に記したように、湿度コントロール&カビ対策は、一筋縄ではいかない奥深さがあるため、原因探求は粘り強く!
調査は、何度も建物内を行ったり来たりしながら、計測・観察・考察を繰り返し、なかなかの運動量になることも。「さすがの探求心ですね!」と後をついていくうちに、記録係の私のほうが原因追及に夢中になってしまい、「次はどこを計測したいの?」と笑いながら、長谷川に問われることもあるのでした。

表面湿度の計測で湿度管理・カビ対策のヒントを

by とみぃ

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