虫は無視…出来ません

調査

◆一番大切なこと

いきなり駄洒落から始めてしまいましたが、館内の虫対策は悩ましいことと思います。 虫対策で、一番大切なことって、何でしょう?

それは…

現状を正しく知ること

適切な対策の第1歩は、適正な調査から!

調査には、トラップを用います。さまざまな形、大きさ、素材、色のトラップがありますが、文化財害虫の調査に適切なトラップを選ぶようにしましょう。

当社では、長谷川がより良いトラップを求めて探すも出会えず、ついに自分で理想のトラップ、その名も「IPMトラップ」を企画して作りました。

これがよく捕まる、自信作!思わず「ネーミング、そのままじゃないですか…」と、突っ込みを入れてしまった私ですが、まさに文化財IPMのためのトラップなのです。

聞くところによると、これまでの3倍数捕まった館もあるそうですよ……良いのか悪いのか…いえ、虫対策で大切なことは、現状を正しく知ることで、適切な対策が出来るのですから、良いことです!!これまで、いないと思っていた虫が捕まるのです。 大切なことなので、2回言いました!

◆適切なトラップとは

虫が捕まりやすいとは、どういうことか?
調査用のトラップを置くことで、虫の動きが阻害されると、捕まりにくくなります。虫がトラップを迂回してしまえば、いない、または、少ないことになってしまいます。
実情、生息していたとしても、捕まらなければいないことになってしまう。調査をしても、意味がなくなってしまうのです。

トラップには折り返しが無く、段差や傾斜が無いほうが、虫は、トラップ内に入りやすくなります。 文化財害虫の多くは、小さな虫が多くいます。生まれたばかりだと、肉眼では見えず、顕微鏡でみてやっとわかる大きさ。そのため、段差や傾斜があるとトラップ内に侵入しないことになります。

ある日のトラップ回収時、私には何もいないように見えたけれど、長谷川は「チャタテ…多数」と述べました。
ウソ!?どこに?ほこりにしか見えません。後から顕微鏡で数えたら、生まれたばかりの小さな小さなチャタテムシが多数捕まっていました。生まれたばかりだったのですね。

ここで、長谷川より補足があります。
「文化財害虫であるゴキブリを捕獲したいときは、折り返しがあった方がいい場合もあります」
そうですね、市販の捕獲器はその形です。でも私は知っています…。折り返しの無い当社のIPMトラップも、大小問わず、よく捕まっています…。

◆トラップを効果的に設置する

トラップの配置の仕方にも、コツがあります。
虫が通りそうなところにトラップを仕掛ける、というのは普通の発想。
まず、どことどこに置くことで、どの辺りで発生しているかを推測し、その結果から、次にどことどこに置くと、発生源(発生している部屋)を特定していけるか。

繰り返し捕まる虫は、室内のどこかで繁殖しています。生きていける環境があるのです。

トラップ回収時も、気を付けるポイントがあります。なぜか一方向だけにギッシリ虫が捕まっているときは、そちらの方向に発生源があり、虫たちが歩いてきたということを示しています。

どう設置したか。虫が多く捕まっている側には、何があるのか。

適切にトラップを配置することで、状況を把握することが出来、対策の方向性が掴めます。 トラップを配置する場所のすべてに、そこに置く意味があるのです。

◆見た目も大事!&白さのワケ

トラップは、なるべく利用者様の目に触れない箇所に設置をしますが、100%とはいきません。

そのため、シンプルで目立たず、展示室等に設置されていても違和感のないデザインにこだわりました。大きさ・高さも、狭い隙間への設置しやすさと共に、ゴキブリやゲジ、アシダカクモなど大きめの虫も入りやすいサイズにしています。

さらに、利用者様の目線から、捕まえた虫が見えにくいように、前面入口部分を斜めになるようにデザインしており、お客様から、ご好評いただいております♪ そんなわけで、トラップ回収時、立ち姿勢からは見えにくいので、私は若干の緊張を伴いつつ、覗き込むのです…。アシダカクモ君が(それも複数)いるときは、なかなかの迫力です!

シンプル=白、という色彩イメージもありますが、粘着面も含めて、全面白いワケは、小さな虫も見逃さないためでもあります。
生まれたてのチャタテムシやシミは、見えにくいので、よぉーく見なくてはなりません。

こだわりの白さは、見た目だけではなく、機能性も秘めているのです!

◆継続的な設置は予防に繋がる

虫の生息状況を、目視で判断するには限界があるため、トラップを適切、かつ継続的に仕掛けることで、詳細な生息状況を知ることが出来ます。
定期的なIPM清掃をおこなう場合も、トラップを設置していることで、当社も清掃重点箇所を割り出すことが出来るのです。つまり、効果的に対策をおこなえる利点があります。
また、トラップをエントランスや荷解き室など虫が入りやすい場所に捕獲用として、常に置くことも、とても重要です。

トラップは、文化財の被害を未然に防ぐための重要アイテムなのです!

「IPMトラップ」の活躍ぶりは、侮れません★

by とみぃ

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