収蔵庫の出入口問題

防虫
収蔵庫扉

◆虫やカビ菌を持ち込まないために

収蔵庫の環境管理に大切なことのひとつに、『外部から虫やカビを持ち込まない』ことがあげられます。
入口扉における攻防戦!…というのは言い過ぎでしょうが、文化財保存に関係する者にとって、気を遣うことのひとつですよね。入口で、靴を(上靴も)収蔵庫専用のスリッパに履き替えることが大切となります。

扉を開けて → 靴を脱いで → 庫内に入る
この流れの中で、思ったことはありませんか?

「扉がぶつからないように、靴は入口から少し離れたところで脱がなくちゃ」

「靴下で…床の上を歩かないと室内に入れない…!え、いいの?」

1人ならまだしも、複数人数で同時に収蔵庫に入るときは、靴が並んで、ますます入口が遠ざかってしまい、靴下で床を踏む一歩のはずが二歩に。
ともかく、収蔵庫の扉の開け閉めは素早く!が基本ゆえ、急いで扉の内側へ!
なにしろ、飛来性の昆虫類がふわ~と入るかもしれませんし、這う虫が扉近くにコソッと潜んでいて、ササッと入ってしまうかもしれません。

さて、片足を上げて庫内に踏み入らんとすると、そこには、収蔵庫内への塵埃や虫の侵入を阻むべく、「粘着シート」が鎮座していることもありますね。

「わ、これって踏んでいいの?(入ってきた虫を捕るためにあるんだよね?)」
※塵埃を付着させる目的で、粘着強度にもよりますが虫は余りつきません。

思わず、またいでしまう(または、つま先立ちでちょこっと踏む)

そういうこと…ありませんか?

そもそも、靴からスリッパに履き替えるならば、何についた微細な塵埃を粘着させているのでしょう?

結局、どうするのが効果的なの???

そこで、このコラムでは、収蔵庫の入口を巡る小さな疑問を解決し、スムーズかつスマートに出入りして、「外部から持ち込まない」を確実に実現していく方法を考察したいと思います!

◆どこで靴を脱ぐか

収蔵庫の出入り口は、大きな扉の開き戸で、外開きの場合が多いと思われます。
人が出入りするだけの場合、大きく扉を開けることは、なるべく控えるのが通常と思います。それも、なるべく短時間でサッと出入りすることが望まれます。

扉の開け閉めに邪魔にならず、 なるべく扉に近いところで、靴を脱ぐしかありません。
となると、どうしても一歩ぐらいは、靴下で床を踏んでから、収蔵庫内に足を踏み入れることになるのではないでしょうか?

それでは、床を踏んだ靴下はどうすればいいのでしょう?
塵埃がついていないか、気になりますよね。

◆粘着シートは何のため?

微細な塵埃を粘着させて飛散を防ぎ、庫内の環境を保つため、お役立ちの粘着シート。

私どもが提案するのは、靴を脱ぎ、靴下の状態でシートを踏んで靴下についた塵埃を取り除くことです。

収蔵庫外で履いている靴は、収蔵庫の外に置いたまま、庫内には持ち込まない。履き替え時に床に足をついた場合、そこで靴下についた塵埃を付着できます。床に足をつかないとしても、生活の上で靴下についた塵埃等を、付着させることが出来ます。

それから、収蔵庫専用のスリッパを履くことが必要となります。

◆スリッパの適切な収納場所

収蔵庫専用スリッパの収納場所には、いくつかのパターンが見受けられます。

【1】入口すぐのところに
① すぐ履けるところに1足をいつも出してある
② スリッパ立てや小さな靴箱に、全てのスリッパを入れてある

【2】3~5歩離れたところに
③ 大きな箱に全てのスリッパが入っている

…等々があります。
③の場合は、①のように一足だけ出ているなど、収蔵庫の規模によって、さまざまな工夫がなされています。

粘着シートに塵埃を付着したとはいえ完璧ではないし、湿気も帯びた靴下のままで、収蔵庫内の床を歩くのは避けたいもの。
すぐにスリッパを履ける状態にしておくのが望ましいですね。
スペースの問題もありますので、③のように、その場でスリッパを履くのが難しい場合で、複数人数で入室するときは、最初の一人が全員分のスリッパを入口まで持っていき、退室はその逆にすることを、館内のルールとして設けておくことも工夫のひとつかと思います。

さて、弊社の顧客様で、「これは秀逸!」と思うスリッパ収納がありました。
館の方が工夫して手作りされていました。

そこは、前室がある大きな収蔵庫。
前室の外扉は屋外に通じており、普段は片側しか開けない、両開きの扉です。複数人数で庫内に入るときも、一歩、前室に入ったら、各々その場でサッとスリッパを履けて、スムーズに入室出来たその理由は!

普段開けない側の扉内側に、お手製のスリッパラックを、DIYで備え付けておられたからでした!

ご自身たちの手作りのため、誂えられたスリッパラックは、サイズも取付位置もピッタリで使い勝手抜群!おかげさまで、私ども清掃作業員5~6人も、ササッと短時間で入退室することが出来ました。

また、広い前室だったため、全員が前室に入ってから、外扉を閉めて、収蔵庫に通じる扉を開けることが出来たことも、スムーズな入退室につながったと思います。そのため、ほとんどの収蔵庫・前室に対応可能ではないかと思いますが、ひとつのアイディアとしてご紹介いたしました。
靴箱はそれ自体が虫の隠れ家となったり、清掃がやりにくいなど、なければない方が良いですよね。

収蔵庫扉

◆虫の侵入防止はIPM防虫テープで

「持ち込まない」の工夫と共に、「入らせない」の工夫もグレードアップしましょう。

ゴムやブラシなどで扉下の隙間を埋めている場合も、経年劣化やほんの僅かな隙間から、虫たちの入室を許してしまっている場合が見受けられます。

そこで、おすすめしたいのは、当社自慢の「IPM防虫テープ」と「防虫テープ貼り職人」(→長谷川のことです。私が勝手にそう呼んでいます)
0.1㎜の隙間なく、経験と工夫でテープを設置して、虫たちの侵入をシャットアウトします。

ぜひ、コラム「IPM防虫テープ」も合わせてお読みくださいませ♪

収蔵庫に「持ち込まない」
出入口の工夫で スムーズな入退室を

by とみぃ

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